ウェルビーイングは企業価値向上の新たな指針になるのか?

Sustainability

「CSV」「ダイバーシティ」「ネットゼロ」「人的資本」――。サステナビリティの世界では、毎年のように新たなキーワードが注目されています。

いまはどの企業も「人的資本」への対応が花盛りですし、プライム市場に上場している大企業の間では、「PBR(株価純資産倍率)」を1倍以上にすることが関心事の一つになっているようです。

これらはもちろん、社会からの要請にしたがい、積極的にあるいは必要に迫られて取り組んでおられることなのですが、取り組みを始めてから数年が経つ頃には、また次の新たなキーワード(課題、概念、考え方など)が産声を上げ、企業は対応を求められることになります。サステナビリティの世界はまるで終わりが見えません。言うのは簡単ですが、実際にやるのは本当に大変なことだと思います。

こうした新たなキーワードの中で、近年注目されているのがウェルビーイング(Well-being)です。私がこの言葉を知ったのは、去年のちょうど今頃の時期(2023年11月ごろ)でした。日経BP社が発行するESG経営誌『日経ESG』の別冊版として編集された小冊子で、いくつかの先行企業が取り上げられていたと記憶しています。

ウェルビーイングは、1946年に採択されたWHO憲章における『健康』の定義が起源とされ、病気がない状態にとどまらず、身体的・精神的・社会的に満たされた状態を指します。

各社が発行している2024年版の年次報告書に目を通すと、企業価値向上を目指した人材戦略の一環として、ウェルビーイング経営を掲げる企業がいくつか出始めています。従業員が健康で幸福な状態にあることで、生産性や創造性が高まり、イノベーションの創出や中長期の企業価値創造につながるとして、エンゲージメントをはじめ、人材育成、働き方改革、健康経営などを推進しています。

また、ウェルビーイングの推進は、従業員だけでなく、顧客や投資家などとのかかわりを通じて、企業の競争力やブランド力、社会的信用力を向上させる大きな要因になると考えられています。SDGsへの貢献という観点でも、目標3「すべての人に健康と福祉を」の実現に寄与するはずです。

ウェルビーイングを意識した経営は、短期的な流行のように見る向きもありますが、従業員の幸福度向上とイノベーション促進を通じて、長期的に企業価値を高める戦略として注目されています。今後、これが一過性の概念に終わるのか、それとも企業の競争力を左右する要因として定着するのか。その未来に期待が寄せられています。

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